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「地域に飛び出す市民国際プラザ」 団体活動インタビュー

◆社会福祉法人さぽうと21(東京都品川区/2020年6月29日)

 難民等日本に定住する外国人などの自立を支援する団体であるさぽうと21。
 元々は、1979年に相馬雪香さんによって設立された「インドシナ難民を助ける会」から始まります。その後、1992年に国内事業を引き継ぐ形で、社会福祉法人さぽうと21として現在まで活動を続けています。今回は同団体の活動のうち学習支援室事業を中心に、矢崎理恵さんからお話を伺いました。



                             

           ↑新型コロナ対策の注意喚起も学習者の手で
                  

  1.   活動概要−学習支援室事業を中心に

 さぽうと21の主な活動は3つに分類されます。1つ目は外国ルーツの青少年(高校生、専門学校生、大学生及び大学院生など)を対象とする就学支援事業。2つ目は主として定住外国人を対象とする相談事業。

 そして最後の3つ目は、難民や中国からの帰国者の方々を対象とする学習支援室事業。品川区の事務所だけでなく、数年ほど前からは墨田区(錦糸町)でも、また、今年度に入り千葉県(行徳)でも、貸会議室を借りて行っています。

 主役は、学習に通う方々と、事業にご協力頂くボランティアの方々。支援の対象は、現在は難民的背景をもって来日した方が多いとのこと。さぽうと21は、子供から60歳代の大人まで、幅広い方々に向けて、日本語、学校での勉強などを応援します。

 矢崎さん曰く「専門性の高い学びの場を提供するというよりも、ご近所さん的な支援に近い」もの。それでも多くの方が、さぽうと21の学習支援を受けるために、来訪されます。


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【参考】上記で取り上げた3つの事業の活動概要については下記URLをご確認下さい。

・「(さぽうと21の)活動について」
URL: https://support21.or.jp/aboutus/
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 事業の運営にあたってボランティアの方々の支援は必須。ボランティアは、大学生や社会人など様々な立場から構成されます。平均して約100名。学習支援を卒業した後に、今度はボランティアとして教室に戻って来る方も。そういう時に「嬉しさとやりがいを感じる」と、矢崎さんは言います。


 他にも、「さぽうと21」の支援から自立した外国籍の方々の活躍を耳にすることがあります。今度は支援者の側にまわり、教会やモスクといった活動場所でも頑張っている方々です。そのような話を聞くこともまた、矢崎さんの喜びの1つです。

 「どのような支援活動に従事しているのか、直接見ることはできない。でも、ここで学んだことは決して無駄にはならない。必ず役立ててくれている」という矢崎さんの力強いご発言が印象的でした。


 ただ「あまり支援する側と支援される側を分けることはできない」と矢崎さんは続けます。学習支援を受けている高校生が、さぽうと21のイベント運営を手伝うこともあれば、小学生の勉強を見る、ということがあるからです。支援者と被支援者が、分け隔てなく、お互いに助け合うことが、活動の基本です。


 子供たちが学習支援事業に参加するようになったのは7年から8年程前。当初は大人のみの参加だったとのこと。就学前の子供たちも矢崎さんたちの活動の対象範囲。なかには60分から90分かけて、遠方から来訪する家族もいらっしゃいます。


 矢崎さんは、子供たちの「学習の習慣化や日常化」が重要だと言います。ある難民の方への支援の際には、ボランティアの方に、図書館の貸出カードの発行の付き添いをお願いしたこともあるそうです。理由は、ご家庭のなかで、本を借りるということを日常化して欲しいから。支援の対象となる子供たちに、どのように習慣的に勉強して貰うのか、矢崎さんたちの大きな課題の1つです。

 長期的な視点で子供たちのことを考えられることもさぽうと21の活動の特徴です。一般的には、子供は成長とともに学ぶ場所が変わるもの。長期的な視点で子供たちを見守るのは、本来はご家庭の役割かも知れません。しかし、全てのご家庭ができるわけではありません。矢崎さんたちは、長期的な視点から、そうした子供たちの将来について考えていきます。


  2.新型コロナ禍での活動状況について

 新型コロナ禍におけるさぽうと21の課題の1つは、子供たちの学習を巡る問題。32日(月)から始まった臨時休校。学習支援は、学校教育と伴走して行われるときに効果を発揮します。しかし、ある外国人のご家庭の母親から「子供が勉強しない」と相談を受けました。矢崎さんたちは悩みました。オンラインでの学習支援が可能かどうか、確信を持てなかったからです。始めた理由について、矢崎さんは率直に「どちらかというと、やらざるを得ないと考えたため」だと述べます。

 417日(金)からオンラインでの個別学習支援が始まりました。


 オンラインでの学習支援のために、1コマ「2時間」と「4時間」という2つの枠を用意。オンライン対応が可能なご家庭から始めました。6月には、延べ人数で400人を超えるボランティア講師の方々が、約500人の子供たち、大人たちを支援するまでに(なお、8月末時点では、ボランティア延べ1,442人、学習者1,644人を数えるとのこと)。毎日、オンライン学習支援に参加する子供たちもいます。

 始めて分かったことは、難民のご家庭のIT環境が比較的に整っているということ。
 理由は日本から遠く離れた母国と接点を持つため。


 ほかに「BACK TOさぽうと21」ということで、過去にボランティア活動に携わって頂いた方への声がけも。矢崎さんは「実家に戻った大学生、海外に居る方、地方にいる方、たくさんの方々に助けられた。オンラインだから距離は関係ない」と述べ、活動に手応えを感じるようになります。


 さらに、子供たちの学習姿勢にも変化が。矢崎さんは「これまでさぽうと21の支援する子供たちはなかなか勉強してこなかった。ただ、今は家庭でも毎日勉強している。毎日やる、というのがすごい」と目を細めます。毎日オンラインで勉強する、となると、たとえばテストで良い点数を取れなかった子供たちも、直ぐに講師に相談できます。「テストの振り返りができることで、子供たちの気持ちのなかで前向きな何かが残る。その結果の積み重ねが家庭学習の習慣化」だと矢崎さんは強調します。


 「特に受験を控える中学3年生がとても努力している」と矢崎さんは続けます。

 時にはオンラインでの学習支援に参加しない受験生も。その場合、ただ参加しないのではなく、まずは自分で支援が必要かを判断し、必要ない場合はその時間を自己学習にあてるとのこと。そして、どうしても課題や問題が分からない場合のみ、オンラインで講師に相談するそうです。このような自律的な学習態度によって、子供たちは力をつけていきます。矢崎さんは「コロナ禍だからこそ生じた現象。今回の危機を前向きに捉えて活動していきたい」と述べます。

3. 「外国ルーツ青少年未来創造事業」について

 (公財)日本国際交流センター(JCIE)が主催する「外国ルーツ青少年未来創造事業」。202057日付で同団体のウェブサイトに助成対象事業が公開されました。この助成金は、教育・社会・就業といった現在の青少年たちが抱える様々な問題に対して、中長期的な視点からアプローチすることに特徴があります。

 助成金の対象となった一覧表を見ると、そこにはさぽうと21の団体名が。

 「「一人も取り残さない」ための包括的学習支援展開事業」として、外国ルーツ青少年に対する包括的学習支援のモデルの考案を目指す内容です。従来の「拠点型」の支援に「アウトリーチ型」の支援―そして今回のコロナ禍で得られた「オンライン型」―を組み合わせることで、タイトル通り「一人も取り残さない」学習支援活動のシステムを構築していきます。なぜ、事業に応募されたのでしょうか。このことについても、矢崎さんからお話を伺いました。


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【参考】

「外国ルーツ青少年未来創造事業」の助成対象事業の決定について
URL: http://www.jcie.or.jp/japan/2020/05/07/post-5244/
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 上記1. で取り上げたように、品川区や墨田区(錦糸町)で実施する「拠点型」の学習支援事業は、さぽうと21の大切な活動内容の1つ。日本で生活する難民の方々が主要な支援対象です。1時間以上もかけて来訪する、子連れの難民のご家庭の方もいらっしゃることから、高い評価を得たうえでの盛況ぶりが伺われます。


 しかし矢崎さんは「その事実が問題」だと述べます。「遠方から電車でいらっしゃる方々の負担は大きい。特に子供であれば尚更でしょう」と、矢崎さんは続けます。それでも来訪されるのは難民の方々が住む、それぞれの地域や地区に、気楽に通い続けられる学習機関が少ないため。矢崎さんは、そこには難民ならではの特別な事情もあると言います。


 「難民の方が住む近隣にも日本語教室はある。当たり前だが、そこには「日本在住」の背景が異なる様々な方々が通う。その際に自己紹介などで「何故日本に?」と問われるだけでも、答えに困ってしまう難民の方も多い。なかには母国で政治活動を行って日本に逃れてきたという人もいる。難民として同じ境遇の方々と、あるいは難民であることを説明しなくても良い方々と、一緒に居たいと思うのは、そうした人々にとって自然のことではないか。支援を必要とする難民の方々が、電車に乗って遠方にある、さぽうと21の事務所に来訪するのは、信頼できる場所が欲しいから。地域にそのような場所があれば、もちろん喜んでお勧めしたい」


 矢崎さんは、各地域に散在する難民の方への効果的な支援の1つの方法が「こちらから出向く「アウトリーチ型」の支援」だと述べます。

 人材としては、難民の方々が居住する地域の近くに住む大学生などの力を借りて、場所としては、その地域で休憩中の飲食店などのテーブルを一時的に借りて、そこで少人数の学習支援などを行う計画。矢崎さんは「なにも大掛かりなことを考えているわけではない。その地域に元々ある「リソース」を少しお借りするだけ。「多文化共生」に興味がある人々はたくさんいる。しかし、入口が分からない。たくさんは・・・という方もいる。少しだけでも関わりをもって貰うことが大切」だと言います。


 矢崎さんたちが期待するのは、こうした「市民力」の積み重ね。「1人の市民として、どの方も力を秘めている。誰もが担うことのできる役割がある。また尊重されるべきである」と矢崎さんは言います。「11つの積み重ねによって、もしかしたら物事が動くかもしれない。行政を動かす力になるのかもしれない。世の中を変える一助になるのかもしれない。ボトムアップでの積み重ねが大切」だと矢崎さんは考えます。


 他にも矢崎さんから、時間の許す限り、新型コロナ禍での相談事業、文化庁から受託している日本語教師の育成事業、外国人を含めた市民11人の秘めた能力、NGO/NPO団体、行政機関、企業及び大学などとの連携の現状などについて、お話を伺いました(時には教育に対する矢崎さんの熱い思いも)。ここで全てをご紹介できないのは残念ですが、拠点型・オンライン型・アウトリーチ型の組み合わせを模索する「さぽうと21」の支援事業の今後が、期待されます。


            
            ↑多地点を結ぶ学習支援のイメージ図