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 平成27年度地域国際化ステップアップセミナー(京都地域)開催報告

『地域を担う人材の教育・育成と循環』〜多様なセクターとの連携・協働〜

開催日:2015年11月18日(水) 13:00〜17:00

会場:キャンパスプラザ京都 2階ホール

参加者数:41名(自治体、地域国際化協会、NGO/NPO、企業等、関係者)

 

はじめに
  今回のセミナーでは『地域を担う人材の教育・育成と循環』〜多様なセクターとの連携・協働〜をテーマ
に実施しました。

   

  前半は、静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 教授 池上重弘 氏より「地域を担う第二世代の教育・育成と循環−自治体が外国につながる子どもたちの教育・人材育成に取り組む意義−」について基調講演をいただいたあと、可児ミッション 総主事代行 山田 拓路 氏、浜松市 企画調整部 国際課 主任 古橋 広樹 氏、社会福祉法人さぽうと21 学習支援室コーディネーター 矢崎 理恵氏、関西学院大学 総合政策学部4年生 テュアン シャン カイ氏より事例発表いただきました。

 

  後半は、公益財団法人京都YWCA 岡 佑里子氏の進行のもと、グループディスカッションを行い、最後は池上教授より総括のご提案していただきました。

 

◆基調講演:地域を担う第二世代の教育・育成と循環−自治体が外国につながる子どもたちの教育・人材育成に取り組む意義−


講演者:静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 教授 池上重弘 氏
 

  地域を担う第二世代の教育育成と循環。第二世代を育てていく為にどんな連携が必要か、静岡県の文化事業を参考に地域の事例を幾つかご紹介したいと思います。  
  

  日本で生まれ日本で育った外国にルーツを持つ子ども達の中に、わずかではあるけれども確実に大学に進学する学生が増えてきています。私たちの世代が前に出ていく時代はもう終わったと考えています。私たちに出来ることは、次の世代が乗る舞台を設け、そこに光を当てることだと考えています。浜松では、舞台を設けると第二世代が自ら舞台に乗って、次の世代に繋げて行くという歯車が回りだしています。  
 

  『共育(ともいく)』「共に育てる、共に育つ」という概念に当て嵌めてみたいと思いますが、共に育てる点においては、斜めの関係について考えてみたいと思います。子どもたちにとって親や先生というのは権威者、縦の関係を言います。友人、知人は横の関係。また、地域の大人たちが関わる斜めの関係が大事であるといえます。磐田市では、地域の大人たちに加えて、お手本となる青年が地域の活動に関わりを持ち、外国人コミュニティも含めた地域づくりが始まりつつあります。さらにこれが連鎖しており、地域で育った外国人の子どもが次の世代にとってのロールモデルとなるように繋がり始めています。これまで支援を受けてきた外国にルーツを持つ子どもが成長し教える側に回るなど、ボランティアとして関わる場所が出来、地域社会への参画のきっかけとなっています。また愛知県名古屋市では大学生だけでなく、中学生においてもそのような人材が育ちつつあります。

   

  『ユニバーサルデザイン』とは「出来る限りすべての人が利用できるように製品、建物、空間をデザインする」という建築、デザインの分野における用語ですが、これは社会のユニバーサルデザインにも応用できるだろうと考えます。外国人でも参画しやすい地域づくり、それが日本人であっても地元で生まれた人以外でも関わっていきやすい社会になっていくということです。 21世紀は、多様な人たちが地域で暮らす時代になってきます。違うところで排除しあうのではなく、繋がれるところで繋がる、ユニバーサルデザインの社会を作ることは、多数派を構成する人々にとっても生きやすい、参加しやすいものとなります。地域が持合わせるリソースを地域へ還元していくことが、まさに地方創生の『人財的』な側面として力を発揮することになるのでは無いでしょうか。

 

 

◆事例発表: 外国人コミュニティに寄り添う教育支援

 

発表者: 可児ミッション 総主事代行 山田 拓路 氏

 

  岐阜県可児市には、フィリピンの北部地方 コルディリェラ地方に住む部族がたくさん暮らしています。OCJ(Organization of Cordillerans in Japan)コルディリェラ出身者の会を母体として発足したのが、可児ミッションです。
 

  コミュニティはありましたが、活動拠点がないということで活動や礼拝をする拠点を教会が全面的に協力して提供したことが、活動のはじまりでした。可児ミッションのスタッフでもある、OCJの代表者アビトン氏は可児市役所の元通訳者兼相談員で可児市内のあらゆるフィリピンコミュニティ住民一人ひとりの情報について精通している人です。また、もう一人ジェピーというスタッフは、ダト・ファミリーというコミュニティの代表者です。岐阜県岐阜市の周辺に、ダトというミンダナオ島(フィリピン南部)出身のフィリピン人が多く住んでおり、彼らフィリピン人コミュニティのリーダーのお蔭で、可児ミッションはフィリピン人コミュニティと深い関わりが出来ています。


  可児ミッションの活動内容は、保育、就学支援、放課後学習支援、成人日本語の主に4つあり、3歳児から大人までの支援を行っています。

  成人日本語教育事業では、一般的な座学以外にも、書道、お弁当づくりを日本語教室の中で開催しています。お弁当作りのイベント広報では、チラシなどの紙媒体は一切使わず、Facebookだけを利用して行いました。フィリピン人コミュニティの中では、Facebookの力は絶大です。もうひとつ、外国人(フィリピン人)住民の方々へのアプローチ方法として、教会を初めとしたコミュニティにこちらから出向いていくアウトリーチが有効であると思っています。可児市には、8軒ほどフィリピン人教会があり、礼拝のある日曜日に出向いていき、日本語クラスを開けばわざわざ人集めをしなくても簡単にクラスが開けます。このようなアウトリーチの方法が地域で進むことは望ましいと思います。   


  昨年度で文部科学省 虹の架け橋教室が終了しました。そのため、就学支援事業は、自主事業として細々と続けている現状がありますが、施策の方向転換によって受益者である子ども達の人生が左右されないように確かな支援体制を作ることが私たちの課題であると言えます。また、一つ一つの外国人支援策を進める上で、外国人の方々は、同郷者のコミュニティ、教会、家族会など色々なコミュニティを独自に持っていますので、外国人当事者コミュニティにおけるリーダーの存在の必要性をこの活動を通して強く感じています。言葉の面もそうですが、それ以上に彼らの持っている信頼、ネットワークは彼らしか持ち得ないものであり、それが無ければプログラムに人を集めたり、アウトリーチ(訪問)するときにも上手くいかなかったりという事が起こって来ると思います。外国人コミュニティのリーダーの協力を得て、当事者の価値観に基づく施策が地域で進むことを期待しています。彼らのような人材は、緊急雇用やパートの通訳者としてではなく、非常に高度な専門性を持った人材としてソーシャルワーカーやコーディネーターのような形で長い目でみた人材育成をすることも大切ではないかと思っています。外国人も地域の担い手として認め、受入れる事こそが、循環型多文化共生社会の第一歩だと考えます。



  

◆事例発表: 外国人の子どもの不就学ゼロ作戦事業の取組み

発表者:浜松市 企画調整部 国際課 主任 古橋 広樹 氏

 

  浜松市には総人口の約2.6%を占める外国人住民が暮らしています。 1990年の改正入管法施行を契機として、日系ブラジル人やペルー人などニューカマーと呼ばれる南米系外国人を中心に市の外国人人口が急増しました。リーマンショックを機に減少傾向にありますが、約半数を南米系住民が占めているのが浜松市の特徴です。

  その他に、アジア諸国(フィリピン、中国、ベトナムなど)の住民が近年増加しており、国籍の多様化が進んでいるという状況です。また、在留資格別内訳としては永住者、定住者など比較的長く日本に滞在する方が8割を超えており、定住化傾向は益々進んでいる状況にあります。 市内全体の約8割の学校に外国人児童が在籍しており、日本生まれ、日本育ちの子どもたちが増える傾向が続いています。しかしながら、外国人に対しては就学の義務が課されていない事と、外国人登録の時代で居住情報、状況が正確に把握できないという2つの理由から、外国人の子どもの状況を正確に把握し、不就学の子どもたちを就学へ結びつけるのが大変困難となっていました。そういった経緯から、本事業が開始されました。浜松市では、多文化共生を重点施策と位置づけており、子ども重視の政策のなかで外国人の子どもの教育を推進する施策に取組んでいます。その重点事業として、外国人の子どもの就学状況の実態の把握と不就学の解消、不就学を生まない仕組みの構築を目的に2011年から(H23)に3ヵ年計画で、外国人の子どもの不就学ゼロ作戦事業を開始しました。


  事業の実施にあたっては、多くの関係機関や団体の協力を得、地域全体で外国人の子どもの入学状況の把握と不就学の解消、不就学を生まない仕組みの構築に取組みました。


  日本の公立小中学校の情報不足が原因の場合は、教育委員会で実施している就学ガイダンスを案内するほか、学校見学を提案して同行したところ、実際に学校に通う外国人の子どもをみて安心し、早い就学に結びついた事例もありました。また、経済的な問題を抱える家庭に対しては、就学援助の制度を案内し、公立小中学校に就学する際の負担の軽減が可能であると説明しました。


  その他にも、NPOが主催する日本語教室を紹介するなど、個々の事情に合わせてきめ細かな支援を実施してきました。また、児童生徒の入れ替わりに対する実態調査も毎年継続して行ってきました。その結果、不就学者は減少し、事業開始から3年目、25年9月20日現在で不就学ゼロを達成しました。


  3年間で構築したノウハウを活かして、関係機関との連携のもと、この取組みを『浜松モデル』として確立し、効果的だった取り組みは、同じ課題を抱える地域へ発信しています。不就学ゼロ作戦事業の実行委員会は3年間で解散し、4年目(昨年度)からは市の外国人学習支援センターで事業を引き続き運営しています。事業自体は、浜松国際交流協会に委託し、継続して『浜松モデル』を推進しています。


  今後の展望としては、不就学の子どもを無くす為の体制の維持・強化や子どもたちの学習の質を高めていくことがいっそう必要となります。外国人の子どもの教育を重要な課題として地域全体で認識し、皆で力を合わせて取組んでいくことが重要です。地域の将来を担う、すべての子どもが教育を受け、これからの社会で活躍し、地域を支える人材となってもらうために、本事業を継続していきたいと考えています。


◆事例発表: 地域で育った外国にルーツを持つ子どもたちの活躍『支援される側』から『支援する側』へ

発表者:社会福祉法人さぽうと21 学習支援室コーディネーター 矢崎 理恵氏

関西学院大学総合政策学部4年生 テュアン シャン カイ氏 (ミャンマー出身)

 

  さぽうと21は、日本に定住するインドシナ難民、条約難民、中国帰国者、日系定住者及びその子弟などの自立を支援する団体で、自立支援事業、学習支援事業、緊急経済支援などを行っています。


※今回の事例発表は、学習支援室コーディネーター矢崎様と当団体の学習支援を受け卒業した当事者であるテュアン・シャン・カイ氏 お二人の掛け合いで行われました。

 

 矢崎氏:テュアン君は、日本生まれですか?

 テュアン氏:はいそうです。

   

 矢崎氏:当時、テュアン君は自分の国やルーツをどのように考えていましたか?

 テュアン氏:正直、自分が外国人であるという自覚は一切なく、自分は、日本人と一緒であるという感覚でいました。強いて、違和感を感じていたことといえば、小学校で漢字を習った際に皆は漢字で名前を書くのに対して、自分は6年間カタカナだったことです。


 矢崎氏:ここでひとつ紹介させてください。さぽうと21では学習支援においてシフトを組んでいます。途中からテュアン君の学習支援体制も強化され、全部で3名体制になりました。
テュアン君には3人のボランティアがついていましたが、そのうちの一人がナムさんというベトナム出身の方です。過去にナムさんも学習支援を受ける側でした。その時に彼の学習支援にあたってくださっていた方は、彼にとってのあこがれのロールモデルであり、彼はその学習支援者と同じくご自身も大学在学中に学習支援ボランティアを始めました。そして、テュアン君を担当することとなったわけです。ナムさんは、就職先も支援者と同じ企業を希望し、その希望を見事に叶えました。これこそまさに「支援の循環」と思う時です。


 テュアン氏:小学校から中学校に入学して学校生活も上手くおくれると思っていましたが、はじめて「いじめ」によって挫折を味わうことになりました。「おまえは何人だ」と言われ、そこで漸く自分が外国人、ミャンマー人であることをハッキリ自覚する事となりました。

 矢崎氏:勉強はどうでしたか?

 テュアン氏:いじめを受けることには、自分にも原因があると考えました。勉強ができる人はそれなりの人格が尊重され、人格が尊重されれば、信頼関係がお互いに築かれるのでは無いかと考えました。そこで、自分も勉強を頑張ろうと決意し、学習支援の時間を増やすきっかけにもなりました。あるときから成績がぐんぐん上がり、高校へは推薦で入学することになりました。


 矢崎氏:今の活動について教えてください。

 テュアン氏:大学1年のときに『Meal for Refugees』という団体を立ち上げました。難民問題は難しいイメージがありますが、違う切り口から広げていきたいと思い、『食』にターゲットを絞りました。日本にいる難民の方々へ故郷の味やお袋の味を聞き取り、それを元に大学の学生食堂、レストラン、社員食堂へ展開しています。現在までに、全国20大学、北は函館〜南は福岡まで、導入に至っています。

 矢崎氏:活動の原動力は何ですか?

 テュアン氏:皆がついて来てくれた事と、これまで27,000食を売り上げており、それだけ多くの方が難民問題に興味をもってくれていることが活動の原動力となっています。



まとめ

 矢崎氏:支援を続けていく中で思うことは、子どもたちの教育に学校は大事なところ、そして家庭がしっかりしているところは、子どもたちも安定しているといつも思います。そして、そこに伴走が居ても良いのかなと思います。必要の無いときには居なくてもいいけれども、必要だったときにはそこに居るという存在が必要なのではないかと思います。『続ける』、『期待する』ことが大事だと思っています。

 テュアン氏:自分が立ち上げた団体のようにエネルギッシュでパワーに満ちている『次世代の方々』は大勢います。そういった方々をあと押しする環境を提供する事が、非常に大事では無いかと思います。また、帰る場所があることも大事だと思っています。僕の場合は、さぽうと21に小学校5年生から高校3年生までお世話になりましたが、教育という面においては、団体の存在が無ければ、今ここで登壇することも無かったですし、高校、ましてや大学進学も出来なかったのでは無いかと思っています。そういう意味においても、日本語の教育や教育支援、学校の支援を受けることの重要さが皆さんにも届いてくれれば良いと思っています。また、さぽうと21のような団体が全国に広がり、次世代の子どもたちの成長の場所となる環境を皆さんと共に作れたら良いと思っています。



◆グループディスカッション

ファシリテーター:公益財団法人京都YWCA 岡 佑里子氏

グループディスカッションでは、基調講演や事例発表を受けての意見交換や、地域の課題の共有として、県と市のすみわけ、民間団体との仕分け、Facebookの活用と功罪、難民受け入れ、在住外国人の高齢化、特に外国人の定住化の流れの中で親世代の高齢化・老い・終活を共に過ごしていくにはどうしたらよいかを考えていかなければならないなど、実に様々な話合が成されました。

   
   

◆総括:第二世代の教育・育成と循環における3つの提案

 静岡文化芸術大学 文化政策学部 国際文化学科 教授 池上重弘 氏


@ 地域連携・協働の成功には、首長をはじめとする行政のイニシアチブが鍵を握る

 浜松市における取組みの背景として、90年代後半に市長が多文化共生をテーマにイニシアチブを取ったことが大きかったと言えます。また、義務教育内を教育委員会、それ以外は市長部局でと棲み分けを行った結果、「不就学」「未就学児」「外国人学校」などは、フォーマルな学校外の課題として市長部局が始め、うまく棲み分けが出来た点もポイントとなりました。

 また、磐田市では、地域の自治会(担い手)が行政に働きかけ、多文化共生が動き出しました。そして、その後もそれに携わった市職員が関連する重要ポストを歴任していく結果になったことも地域で多文化共生を推進する上で力となりました。


A 次世代にどうつなぐか?持続可能な循環型社会の構築に向けて

 日本語で日本社会に向けて発信できる若者が台頭してきています。次の子どもたちにとってのロールモデルをどう見せていくかが、次世代へバトンを繋げる鍵となります。

 逆境を乗り越えて今を切り開いている若者たちの力は、企業や地域にとっても魅力的な力に他なりません。

 当事者たちと接している人が、仲介者となって、如何に彼らを社会に紹介していけるかが問われています。彼らのやる気を引き伸ばし、後押しする教育環境づくりが重要と言えます。


B 「母語・母文化の継承」違いを力に。アイデンティティの尊重について

 親との話し合い、進路・就職・結婚についての考えを親と共有する「母語」の力も大切です。
今後は継承言語になっていくかもしれませんが、外国とのつながり・ルーツをメリットにしていくためにも、アイデンティティ確立のためにも「母語・母文化の継承」を考えていく必要があります。


おわりに

 今回のセミナーを通して、日本で生まれ育った外国にルーツを持つ子ども達が、次世代を担う有望な人材として地域社会に羽ばたき始めている事を知る事ができました。時間はかかりますが、かつて『支援される側』であった者が『支援する側』に成長し、プラスの連鎖を生んでいることは大きな成果として着目すべき点であると思われます。

 また、安定的且つ継続的な支援体制の構築には、地域連携・協働は不可欠であると、改めて考える機会となりました。自治体がイニシアチブを取り、地域全体を巻込む事例が増えることを期待したいです。

 さらに、持続可能な循環型社会構築の第一歩として、外国人という枠組みだけに捉われるのではなく、多様性を認め合う「社会のユニバーサルデザイン化」についても考えていきたいと思います。